HPのリニューアル中に伴って、本当に久しぶりの更新のテーラー新屋のダイスケです。
ブログの書き方を忘れてしまったので、リハビリを兼ねて今回は、Youtubeを利用しながら書いてみたいと思います。
今回の話題はテーラーの基本であり、洋服を仕立てる上での根幹となる『採寸』と『裁断』についてです。
まず、『採寸』については約12~36箇所以上とそれぞれお店によって測る部位や箇所が異なります。
なぜ採寸箇所がそんなに違うとお思いですか?
なぜなら、採寸には大まかに分けて短寸式(ショートメジャーシステム)と胸度式(ロングメジャーシステム)に分かれるからです。
胸度式はバストを基準に、その比例寸法によって各点を割り出していく製図方法で、バランスを重視し、仕上がりが標準シルエットの洋服を作ることが出来ます。
胸度式は、採寸法や製図法が容易であるが為、それだけに採寸時における体型観察が特に大切で、それを製図の中に適切に取り入れなければいけません。
例えば、胸度式はバスト92センチを基準として比例寸法を割り出しているので、子供の服や、バストが100センチ以上の人にはうまく比例寸法を採用出来ず、割り出し寸法を加味しなければいけません。
※テーラー新屋ではWorking Scaleという概念を使い、よりバランスの良い比例寸法を採用しています。
一方、短寸式は胸度式のようにバストを基準とせず、お客様の体型の特徴を寸法で細かく数値で表すので、胸度式よりも、よりお客様の体型を把握出来ます。しかし採寸の仕方が難しく、1センチ前後の誤差などざらにあり、あくまでも参考寸法として把握した方がよい結果を得られる事が多いです。
※金洋服店の服部先生の斜辺裁断法も短寸式の一つです。
現存する多くのテーラーは、胸度式が主流となっており、短寸式はあまり用いられていませんが、胸度式製図に短寸式の寸法を参考に取り入れる採寸法を採用しています。
続いて、『裁断』についてです。
裁断というと型紙(パターン)を作って、その型紙を使って生地にチャコで線を引くのが一般的です。

テーラー新屋では、『直か裁ち』という手法を用いています。直か裁ちとは、その名の通り型紙を作らず直接生地に線を引いていく手法で、裁断法を充分マスターしなければならず、マスターした場合には、生地の用尺問わず、型紙を使っての裁ち方と変わりません。
百聞は一見にしかず、下記の動画をご覧下さい。
浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】は、もうすぐHPをリニューアルしますので、ご期待下さい。
テーマ:メンズファッション - ジャンル:ファッション・ブランド
2012.03.20
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最近、Wikipediaのルパン三世の項目に、ルパンが着ているジャケットはヘンリー・プールで誂えたとあって、少し意外に感じたテーラー新屋のダイスケです。まぁ、Wikipediaですし…ね。
っということで、今回はコート、特にチェスターフィールド・コートについて書いてみたいと思います。
チェスターフィールドというと、フィリップ・ドーマー・スタンホープの「書簡集」で知られているチェスターフィールド四世伯を思い浮かべる方が多いと思います。
チェスターフィールド四世は十八世紀イギリスの政治家にして当代屈指の才人であり、また、当時の礼儀作法の権威者でもあり、粋人の典型として、伯爵は英米社会の隅々までも名を馳せた人物です。
そのような血筋があったのでしょうか。現在のチェスターフィールド・コートの元祖は、その孫のチェスターフィールド六世ことジョージ・オウガスタス・フレディック・スタンホープが考案されたものだと言われています。彼もまた、1830年代におけるファッションリーダーであった人物とされています。
それでは、前置きが長くなりましたが、チェスターフィールド・コートの特徴を羅列したいと思います。
■多くの色は、黒か濃紺のウール地で仕立てられます。
■胴は、ずん胴(ボックスコートの様なスタイル)ではなく、に身体の線に沿わせて適度に絞ります。
■ポケットはスーツの上衣と同様、胸にはウェルト、腰には雨蓋付きポケットがしつけられています。
■比翼仕立てのシングルブレスト、またはダブルブレスト(一説にはシングルの方が原則であるとの説もあります)。
■着丈は流行によって多少左右されますが、おおむね膝丈程度が中心となります。
■ラペルはノッチで、その上襟にはベルベットをかぶせます。
大まかですが、上記の様なスタイルとなります。
さて、ここで問題です。
着丈について、膝丈程度と書きましたが、ちゃんとした目安があります。
下記の図を参照してみてください。A、B、Cどれが正しい長さだと思いますか?

正解はCです。
それぞれ、Aはモーニングコートの着丈、Bはテールコート(燕尾服)の着丈となっております。
チェスターフィールドは礼装、昼夜兼用の盛装でも利用されることを前提としております。その為、テールコート(燕尾服)を着ても見えない長さである必要があるわけです。
最近は丈の短いチェスターフィールド(もどき?)を見かけます。もちろんこれはこれで、爽快な印象を与えるデザインですので、私自身も良いのではないかと思います。ただしモーニング、テールコートを着る機会がない前提であればの話です。
最後にチェスターフィールド・コートの特徴でもある上襟についてです。
上襟のベルベットは、ほんの伊達好みの思いつきと思ったら大きな間違いです。たかが一片の布切れですが、あれには意外な事実がまつわっています。
上襟にベルベットの襟が付けられたのは、1850年代頃といわれています。
フランス大革命の当時、革命反対の政治家や貴族たちが、つぎつぎに断頭台にかけられ、ついには、ルイ十六世やその妃であるマリー・アントワネットまで処刑されました。
その横暴な仕打ちに深く憤りをおぼえたイギリス貴族あたりの人々が、ひそかに抗議の意味で襟に黒いベルベットを縫い付け、一種の喪章としての意味ではじまったものです。
フラワーホールや、襟のベルベット及び着丈、本切羽など、一見スーツには無意味なモノにみえますが、故事来歴が絡んでいる事を考えると、なかなか面白いのではないでしょうか?
浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】は、歴史などは、私たち専門家が知っていればいい事ですので、お客様にはいかに愉しく、格好良く着こなしていただけたらと思います。
テーマ:メンズファッション - ジャンル:ファッション・ブランド
2010.12.11
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本当に久々の更新になります、テーラー新屋のダイスケです。久しぶりの更新なので、書く勘を取り戻す為に簡単に書いてみたいと思います。
さて、今回のテーマは『ブランド』についてです。
一般に『ブランド』とは商標(=トレードマーク)の意味で用いられていますが、元来は罪人や家畜に押した「烙印」のことです。
ところで、ブランドにはどのような効用があるのでしょうか?
1: 他商品との区別
2: 品質の保証
3: 宣伝広告
…etc
などがあげられますが、今日では「ブランド合戦」とか「ブランド商戦」とかいわれているように、もっぱら宣伝広告が目的となり、品質の保証もなければ、他の商品との「区別」よりも「差別」に重点がおかれているような気がしてなりません。
なかでも目をそむけたくなるのが海外の名前を使った、所謂“デザイナー・ブランド”です。
例えば、あらゆる商品にメーカーやリテーラーのブランドがついているのと同じ要領で、デザイナーのブランドをやたらに使うとしたら、大げさに言えば一種の詐欺行為にも等しいのではないのでしょうか?
ダンヒルのライターはアルフレッド・ダンヒルによって開発されましたが、以後、店名=商標名としてうけとられ、その他の喫煙具にしろ、ネクタイやカフリンクスのようなアクセサリーにしろ“ダンヒル”と書いてあっても何ら抵抗を感じません。
それは、ちょうど“三越”や“ハロッズ”や“オー・プランタン”などと記したラベルが商品についているようなものであるからです。
しかし、デザイナー・ブランドに対する消費者の感覚はそれとは別であり、これがまた「業者」のねらいでもあるわけです。
一例を出せば“ディオール”と書いてある商品(ドレスであれ、ストッキングであれ、香水であれ…etc)を、あたかもクリスチャン・ディオールがじきじきに手がけたモノのような錯覚に陥って(正確には、陥れられて?)高い代金を支払い、満足している方々は「自己満足」しかり「自己欺瞞」に気のつかない哀れむべき人にならないで欲しいと思います。
以前、ある若い女性がテレビで海外へ行って「クリスチャン・ディオールのコレクションを海外へ毎シーズン購入しに行く」と話していたことがありました。
邪推ですが、その女性は「毎シーズンのコレクションにもディオール作品が盛んに紹介されている位だから、ディオールの商品はクリスチャン・ディオールが何かしら関わっている」と思っているのではないのでしょうか?
私はその話を聞いてとても悲しい気持ちになりました。
彼女は、ディオールが今を去る1957年に既に故人となっているのにお気付きではないでしょうか?それとも、クリスチャン・ディオールが去った後のディオールでないラインがお好みなのでしょうか?
それでは、そういった、所謂業者に騙されない為には、どうすればよいのか?
普段から本当に良いモノを見極める目を養うしかないと思います。
質の良いモノと悪いモノの違いを実際に現物に触り比べるべきだと思います。
今日、ネットによる情報化時代なるが故に、誤った情報が氾濫し、女性ならず、男性をも迷わせている気がします。
浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】では勿論ブランドの生地を沢山扱っていますが、ダンヒルだから、スキャバルだから、ナポレナだから良いというような仕入れをせず、実際に生地を触り風合いを確かめ、国産、舶来問わず良い生地を仕入れています。
テーマ:男性ファッション全般 - ジャンル:ファッション・ブランド
2010.11.11
| Comments(2) | Trackback(0) | 人物
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