梅雨の季節真っ只中で、連日降る雨に少し憂鬱なダイスケです、こんばんは。
日本人にとって馴染みのある繊維といえば絹、麻、綿が挙げられます。それもそのはず、2千年来の伝統を誇る着物文化を築いてきたからです。
ところが、『毛』の服飾文化はまだ浅く、日本語では動物の毛はすべて『毛』の1語で表現されていることからも感じとれます。
例えば、『羊』、『アンゴラ山羊』、『カシミヤ山羊』、『らくだ』、『アルパカ』…etc
羊毛と獣毛とを区別する言葉が無いのです。
一方、アメリカやヨーロッパでは羊の毛のみを『wool』とし、獣毛は『hair』と区別しています。
そこで今回はウール(羊)と獣毛の代表格であるモヘア(アンゴラ山羊)の違いについて4つの項目に分けて書いてみたいと思います。少々退屈だと思います。
1.ウールとモヘアでは毛の組織構造が違います。
ウールには『クリンプ』と呼ばれる縮れた繊維の集合のため伸縮性に富み、繊維と繊維の間に空気を含ませ保温力があります。簡単に言えばアフロです。
一方、モヘアには『クリンプ』が無く真っ直ぐの繊維なので余り伸び縮みしません。その為フェルトには出来ませんが、起毛したモヘアは繊維が綺麗に並ぶのでウールよりも膨大な空気を含むことができます。これはストレートヘアを逆毛にしたイメージです。
起毛したモヘアはウールの半分の目方で、温かさは倍の保湿力があるといわれています。
2.スケールの違い
ウールは『スケール』と呼ばれる、繊維の表面がうろこ状になっています。例えるなら地層の断層写真のようになっています。言い換えれば、からみ易い性質を持っていますので、巻縮して起毛させフェルト化しやすいと言えます。
モヘアはその逆で、平滑で光沢豊かな『スケール』におおわれているため、全くフェルト化することが出来ない代わりに、なめらかで光沢にめぐまれたソフトな手触りとなります。モヘアのスケールは薄いガラス板を重ねたようなイメージです。
3.毛髄の有無
ウールの繊維はほとんど毛髄が後退したものが多いのに対し、モヘアは毛髄がよく発達しているので、ところどころ中空になっています。その中空の構造が温度の伝導を遮るので、冬物用としては暖かく、夏物用には涼しい効果をもたらします。
4.吸湿スピードの違い
ウールもモヘアも吸湿性に恵まれていますが、麻と綿の吸湿スピードの差と同様、モヘアはウールに比べて倍の吸湿の速さがあると言われています。この優れた性質の為、絹と同じくモヘアも夏物衣料として最高の快適性が評価されています。
まとめ
ウールは無数のクリンプを持って、からみ易いスケールが突出しているのでザラザラの繊維で、モヘアは光り輝くスベスベの薄いガラス板のようなスケールでおおわれているのでツルツルの繊維。どちらが優れているわけではなく、用途に応じて上手に使い分けることが重要です。
色々小難しいことを書きましたが、それでも随分と簡略化して書いていますので、興味を持った方は詳しく調べてみると面白いと思います。
ちなみに『モヘア』という語は古代アラビア語の『ムカハヤ』という『輝く山羊の毛の布地』を意味する言葉からきているそうです。
最近は3シーズン対応の薄手のウールのスーツばかり見受けられます。
1年中薄手のウールで過ごすより、季節に合った生地を選んで着た方が粋だし、なにより着ていて季節感を感じとれることができ、スーツを着ること自体が楽しくなるのではないかと思ったからです。
浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】は四季折々のスーツもよいですが、12ヶ月それぞれの月に合ったスーツが着られることができたらステキだなと思います。
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テーマ:男性ファッション全般 - ジャンル:ファッション・ブランド
2008.06.21
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お久しぶりのダイスケです、こんばんは。最近ようやくマイハサミを使いこなせるようになったのでうれしくてブログに書かせていただきます。
テーラーと鋏は切っても切れない関係??で、布さえ切れればどんなハサミでもかまわないわけですが、やはり多くのテーラーが道具に、殊に鋏にこだわっている人が多いのではないでしょうか?
そこで今回は鋏のブランドについて書いてみたいと思います。
鋏と一口で言っても用途は様々で、製図した紙を切る専用の鋏、縫う時に使う小ぶりの洋裁鋏、そして裁断の時に使う裁ち鋏です。
裁ち鋏は別名、羅紗切り(ラシャキリ)鋏とも呼ばれ、サイズは24cm~30cmぐらいの大変大きなはさみを使用します。切れ味のいい裁ち鋏で生地を裁断するのは、とても心地よいものなのです!
そんなわけで、早速ですが、世界の有名な鋏のブランドをご紹介したいと思います。
日本の高級なハサミは全体が軟らかい鉄でできており、刃の裏の部分のみが鋼でできています。そのため、軟らかく切れ味がとても鋭いのが特長です。
とりわけ有名なハサミといえば、『長太郎』です。
日本の羅紗切鋏の元祖である吉田弥十郎の流れを組む鋏で、総火造りの鋏はテーラーの憧れの鋏です。価格は21万円だそうです。他にも『庄三郎』も人気のようです。
一方、日本以外のハサミは全鋼で出来ているものが多く、多少無理な使い方をしても調子が狂いにくいのが特長です。もちろん必要以上無理をすると、歪みがでて直すことが困難ですが・・・
最近、あるテーラーに伺った話によると、イギリスのテーラーは鋏が切れなくなると、ビール瓶などを軽く切る動作をして研ぐこともあるそうです(そのぐらい鋏が丈夫だという意味らしいです)
付け鋼に比べると切れ味が若干劣る場合が多いですが、サイズも日本製よりも大きく、14インチ(36センチ)以上もざらにあり、またデザインも国ごとに個性があるのが特徴です。
国別に代表的な鋏のブランドを挙げると、
クラフトマンシップの強いドイツでは、『Kissner』や『Gross Umstadt』、もちろん有名な『Zwilling』と『Solingen』も忘れてはいけません。
紳士服の本場イギリスでは、Sheffield生まれの鋏『Wilkinson & Sons』が特に有名です。
このWilkinsonだけが今でも13インチ(約33センチ)の鋏を作り続けています。また『William Whiteley』もSheffield生まれの鋏として現在も活躍しています。
最後に、意外にも世界のテーラーから一番支持されている鋏はアメリカ製です。
個人的な偏見ですが、ずいぶん大雑把な仕事をしそうに思えるのですが・・・
New Jersey生まれのその鋏は『R. Heinisch』というブランドで、それと双璧をなすのが『Wiss & Sons』です。両方とも大変似たデザインで、とても個性的な形をしています。
あるイギリスの服飾系の掲示板を見ていたら、結論的に”昔の”R. Heinischが一番良いと結論つけていました(あくまで“昔の”)。一方、日本で一番といっても差し支えの無いテーラーはWissよりもWilkinsonの方が使い勝手がよいとおっしゃっていたので、まぁ、人それぞれなんだと思います。
これらの鋏を今入手することは大変困難ですが、さらに困難なことが私にはあります。それは左利きということです。たまにブランドの鋏を見つけることがあっても、その90%以上が右利きなので購入することができませんでした。
それが昨年偶然見つけたのです、左利き用の14インチのWilkinsonの鋏をっ!!
総左の鋏ではなく、持ち手の部分だけが左用でしたが私には願ったり叶ったりでした。お世辞にもよい状態とは言えない鋏でしたが、何件かの研ぎ師にお願いをしてようやく使える代物となりました。
慣れない大きさと(今まで26センチの鋏を使っていたのが、36センチの鋏になったのですから当然ですが)重さで随分苦労しましたが、最近ようやく自分の思うように扱えるようになってきました。そこで本邦初公開??左利き用のWilkinsonの鋏をご紹介します。右の26センチの鋏と見比べて見てください。

上記の掲示板を見ていたらやはりいました、鋏マニアが。思わず見とれてしまいます。
右上の方にあるのがR. Heinischの鋏です。特徴のあるデザインが秀逸です。一番左はWilkinsonではないかと思います。

浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】はこの左用Wilkinsonを生涯大事に使い続けるとともに、R. Heinischの左利き鋏を見つけたら是非教えていただきたいと思います。
テーマ:男性ファッション全般 - ジャンル:ファッション・ブランド
2008.06.07
| Comments(1) | Trackback(0) | 服飾小物
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