男のたしなみ服装術【テーラー新屋】 服飾小物
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【ボルサリーノ】スーツと帽子の関係【Christys'】

先日、大手ポータルサイトのExcite(エキサイト)から『なぜ、老紳士はスーツと帽子をセットで着こなすのか?』という題材で専門家の方に取材をさせていただきたいとのお問い合わせがあったダイスケです。

そして本日、『エキサイトbitコネタ』より取材内容がアップされました。

芸能人でもない一般人の日記を毎日書くよりも、更新頻度は低くても、より質の高い内容をブログに載せる事を考えて書いていたことが報われた気がして嬉しい限りです。

Excite(エキサイト)の記者の方及び、協力頂いた金洋服店の服部先生に心よりお礼申し上げます。

エキサイトbitコネタ「なぜ、老紳士はスーツと帽子をセットで着こなすのか?」
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1249530766450.html


さて、今回はWebの都合上詳しく載せることの出来なかった『どうして、スーツと帽子の組み合わせが廃れてしまったのか?』について補足の意味も含め書いてみたいと思います。


まず、日本におけるスーツと帽子の組み合わせは、私が知る限り1868年にビーバー・ハット(シルクハットの形をしているけれども、シルクではなくビーバーの毛で作られた帽子)が初めて日本へ輸入されました。しかし、ほとんど被られることはなかったそうです。

実際に日本に定着したのは明治後期の1800年代後期から1900年初頭にかけてだと言われています。イメージではありますが、夏目漱石の時代から太宰治の時代にはスーツ姿には勿論の事、着物姿にも帽子を合わせて着こなしていた気がします。

そして、1920年~1930年にかけて現在のスーツのスタイル(ラウンジ・スーツ)が出来上がり、その頃は『スーツに帽子を合わせる』というよりも、『スーツとは帽子やネクタイも含めて1つの装いである』と考えられていました(現在でも礼装には定められたシャツ、帽子、ネクタイ…etcが存在することからわかって頂けたらと思います)。

また、帽子はオーバーコートや手袋と同様に寒さから身を守る為の生活必需品でもあったことも見逃せない重要なファクターの1つだと思います。

ロンドンで出版されたウェンディ・ホームズという人の書いたエチケットの本の中に紳士か非紳士かを見分けるコツという一節があり、
第一に他家を訪問して玄関に入りすぐに帽子をとるのは本物の紳士。
次に玄関へ入っても帽子を脱ぐことを忘れているのは上辺だけの紳士。
第三に、帽子をかぶらない男性は、上辺も中身も、紳士とは無関係の存在であるとも書かれています。
つまり、流行というよりも、社会的地位を保証された人々の『身だしなみ』としてスーツと帽子の組み合わせがあったのではないかと思います。


さて、話しは戻り日本ではというと、スーツの文化が日本へ入って来た当時、その生活様式の1部分(表面上)だけを取り入れた事が、帽子にスーツ姿という格好が定着しなかった原因であると私は思っています。家の中で靴を履き、椅子に座って食事を摂る欧米と、和服を着て、靴を脱ぎ、畳の上に座り、洋服は衣文かけに吊るすのではなく箪笥にしまう日本では、生活様式があまりにもかけ離れすぎていました。


現在では生活様式も欧米化し、帽子にスーツという格好を取り入れることができるようになりましたが、それと同時に、私も含め目上の者に対し、目下が仕事以外の社会的通念を教わる機会が減ってしまいました。

それでは、ここでスーツの正しい着方を知っている人が何人いるでしょうか?

1.アンダーウェアを着用します
2.続いてシャツを着ます
3.その後、靴を履いた後にズボンを着用する今の細身のスーツではとても出来ない芸当ですね

というのが本来のスーツの正しい着方です。こういった事を、昔は親から子へ、先生から生徒へ、近所の人から知り合いの子供へと教えていった為、現在でも年配の方は極自然にスーツに帽子の組み合わせができるのではないでしょうか?


そして何よりも大きい事が、ボー・ブランメル、プリンス・オブ・ウェールズ(ジョージ4世)、レッド・ドルセイ、ジョージ・ハンガー、ロバート・フィールディングなどといった本物の紳士、ウェル・ドレッサー(ダンディズムを持ち合わせた人物)そのものが減り、カジュアル志向、ブランド志向へと移行したことが最大の原因だと思います。


しかし、それとは別に最近盛んにエコロジーが取りざたされており、『本当に良いモノを長く使う』という風潮があるのは良いことだと思います。
私事になりますが、父が30年前に着用していたハリスツィードのジャケットを仕立て直して今でも着用しています。30年の父の想いのつまったジャケットを着て、いい感じにくたびれたハリスツィードは、どんなにお金を出しても買えるものではありません

同様に、高級な帽子には裏側に「ビン蝶」と呼ばれる蝶結びされた部分があり、多少のサイズの違いでしたらビン蝶を結び直したり、取り外したりして別のサイズの「ビン蝶」を付け替える事でサイズを合わせ、より長く愛用できるように工夫されています。


今後再び帽子とスーツの組み合わせを考えた時、かつての洋服の歴史を振り返ると、50年~60年周期でファッションは繰返されることが多かったので、シルクハットやボーラーなどハードタイプの帽子は難しいとしても、ソフトハットやポークパイ、ホンブルグ、ハンチング、チロリアンハットなどはスーツやジャケットとの相性も良く、気軽に被れるので、試して頂きたいなと思います。

とにかく、帽子を被ることは慣れないうちは照れくさかったり、恥ずかしかったりと感じることがあるかもしれませんが、身構えず、もっと気楽に被って欲しいと思います。


最後に無帽に関するエピソードを2つ紹介したいと思います。

故ケネディー大統領側近の記者W・マンチェスターの書いた「ある大統領の死」という本の中に柩側(きゅうそく)にしたがった近親者たちは揃ってモーニングを着用していましたが、誰一人トップ・ハットを被っていなかったそうです。
なぜかというと、故大統領のエドワードがモーニングを注文した貸衣装店が、同時に注文を受けたトップ・ハットを忘れて届けなかったからで、このためやむをえず、他の連中もエドワード君に同調して、無帽のまま参列という結果になったそうです。
結果、ケネディー大統領以降、就任式において帽子を着用した大統領はいません。

また、有名な話の1つとして、ウィンザー公(エドワード8世)の妻であるシンプソン夫人がある催し物の際、普段は素敵な帽子を被るシンプソン夫人が帽子を被らないで出席されたことがあり、帽子店から是非帽子を被るようにとの強い要請があったという逸話も残されています。

このように、服装エチケットの起源などをよく調べると、間違ったことが何かのきっかけで正しいことと勘違いされ、そのまま通用してしまう例は珍しくありません。


浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】ではエキサイトbitコネタでも書いてあるように、若いビジネスマンには、ぜひ老紳士の装いから大人の男の余裕と気品を学んで欲しいと思います。


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2009.08.12 | Comments(3) | Trackback(0) | 服飾小物

【ネクタイの結び方】

今年も父の日が近づき『ネクタイ』を贈ることができなくて悩んでいるダイスケです、こんばんは。さすがに店にあるネクタイを渡してもね…


父の日といえば、やはりネクタイが定番です。
昨年はこの時期に『よいネクタイの選び方』を書きましたので、今年はもう一歩踏み込んで、『ネクタイの結び方』について書いてみようと思います。
プレゼントのついでに結び方まで教えてあげたら喜ぶのではないでしょうか?


トマス・フィンクの「ネクタイの数学」によると、ネクタイには85通りの結び方があるそうです。(ネクタイの長さで結べる限界を9ステップとした場合)
しかし、それはあくまでも数学的な話で、実際に結ぶにあたって美的に見える(対称性やバランスなどを考慮した)結び方は13通りといわれています。


Youtubeに親切にもいくつか結び方を載せている人がいたので、それぞれの特徴を踏まえながら紹介したいと思います。
重要なことは、どんな結び方をするにしても、ネクタイの素材の選択、ノット(結び目)とカラーのバランスが大事だということです。


ノット(結び目)が小さい順に紹介していくと

■オリエンタル
一番簡単で最も結び目の小さい結び方
対称性もバランスも完璧なこの結び方はシンプルかつエレガントな構造をもっています。しかし、単純なので丁寧に結ばないと形が整わなく、緩みやすい欠点があります。
ニット・タイやウール・タイなど厚地のネクタイを小さいノットにしたい時には最適です。



■フォアインハンド
最も広く普及している結び方
日本では『シングルノット』とも呼ばれたりしています。
ほっそりした先細りのノットで、きちんとした三角形にせず、あえてバランスを崩すのがポイントです。



■ケルヴィン
オリエンタルにさらに大剣をもう一度小剣に巻きつける結び方
フォアインハンドより対称性が高く、ふっくらしています。
ほっそりとしてエレガントなノットです。


■ニッキー
エレガントかつ用途の広い結び方
フォアインハンドとハーフウィンザーの中間のサイズです。



■ヴィクトリア
薄地のネクタイや使い古したネクタイを結ぶときに役立つ結び方
日本では『ダブルノット』と呼ばれています。
ノットの形はフォアインハンドと似ているがやや厚みが出ます。



■ハーフウィンザー
最も用途の広い結び方
フォアインハンドとウィンザーの中間に位置します。
対称性もバランスも完璧で極端なところがなくバランスの取れた形です。
薄地のネクタイや使い込んで柔らかくなったネクタイで締めれば目立たないノット、シルクやウールのヴォリュームのあるネクタイで締めれば存在感のあるノットになります。



■セントアンドリュー
ハーフウィンザーとウィンザーの中間に位置するが、どちらよりもほっそりとした結び方
綺麗に結ぶことができれば、ディンプル映えのする厚みのある結び目ができ、優美なひだを作ることができます。



■プラッツバーグ
対称性が比較的高く上が広く下が細い逆三角形となる結び方
幅の広い結び目になるため、ワイドカラーに薄地のネクタイを結ぶときや、使い古しのネクタイを使うときに最適です。



■キャヴェンディッシュ
フォアインハンドを2回、左右に締める結び方
フォアインハンドの形と似ていて、ほっそりした三角形ですが、フォアインハンドよりもふっくらしたノットになります。
ナローカラーにもワイドカラーにもバランスよく結べます。



■ウィンザー
ウィンザー(スプレッド)カラーによく似合う結び方
ウィンザー公が好んで締めていたネクタイのように厚みのある三角形のノットです。(ウィンザー公はこの結び方をせず、別の方法で厚みを出していました。)
印象を抑えたい時は、軽い素材のタイか使い込んで軟らかくなったタイで結ぶとよいです。



■グランチスター
ケルヴィンにフォアインハンドを組み合わせた結び方
今の時代にはなかなか結ぶ人はいませんが、量感のある大きなノットを好む人は結んでみるといいかもしれません。


■ハノーヴァー
オリエンタルにハーフウィンザーを拡張した結び方
対称性もバランスも完璧で、シンプルかつエレガントでバランスの良い三角形のノットですが、サイズはウィンザーよりもさらに大きいです。


■バルチェス
プラッツバーグの拡張型で、プラッツバーグが2回繰り返すのに対して3回繰り返す結び方
9ステップの中でももっとも幅の広い逆三角形のノットです。


私自身この13通り以外にも色々試してみました。
結果、以前はダブルノットが多かったのですが、現在はキャヴェンディッシュで結ぶことが多くなり、またシルキーな素材のネクタイのときにはセントアンドリュース、ウールのネクタイならオリエンタルで結ぶ、というように使いわけるようになりました。


浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】は『日本中の頑張っているお父さん』を応援しています。


テーマ:男性ファッション全般 - ジャンル:ファッション・ブランド

2008.06.09 | Comments(0) | Trackback(0) | 服飾小物

【Wilkinson】鋏とブランド【Wiss】

お久しぶりのダイスケです、こんばんは。最近ようやくマイハサミを使いこなせるようになったのでうれしくてブログに書かせていただきます。


テーラーと鋏は切っても切れない関係??で、布さえ切れればどんなハサミでもかまわないわけですが、やはり多くのテーラーが道具に、殊に鋏にこだわっている人が多いのではないでしょうか?


そこで今回は鋏のブランドについて書いてみたいと思います。

鋏と一口で言っても用途は様々で、製図した紙を切る専用の鋏、縫う時に使う小ぶりの洋裁鋏、そして裁断の時に使う裁ち鋏です。
裁ち鋏は別名、羅紗切り(ラシャキリ)鋏とも呼ばれ、サイズは24cm~30cmぐらいの大変大きなはさみを使用します。切れ味のいい裁ち鋏で生地を裁断するのは、とても心地よいものなのです!


そんなわけで、早速ですが、世界の有名な鋏のブランドをご紹介したいと思います。

日本の高級なハサミは全体が軟らかい鉄でできており、刃の裏の部分のみが鋼でできています。そのため、軟らかく切れ味がとても鋭いのが特長です。

とりわけ有名なハサミといえば、『長太郎』です。
日本の羅紗切鋏の元祖である吉田弥十郎の流れを組む鋏で、総火造りの鋏はテーラーの憧れの鋏です。価格は21万円だそうです。他にも『庄三郎』も人気のようです。


一方、日本以外のハサミは全鋼で出来ているものが多く、多少無理な使い方をしても調子が狂いにくいのが特長です。もちろん必要以上無理をすると、歪みがでて直すことが困難ですが・・・
最近、あるテーラーに伺った話によると、イギリスのテーラーは鋏が切れなくなると、ビール瓶などを軽く切る動作をして研ぐこともあるそうです(そのぐらい鋏が丈夫だという意味らしいです)

付け鋼に比べると切れ味が若干劣る場合が多いですが、サイズも日本製よりも大きく、14インチ(36センチ)以上もざらにあり、またデザインも国ごとに個性があるのが特徴です。


国別に代表的な鋏のブランドを挙げると、
クラフトマンシップの強いドイツでは、『Kissner』や『Gross Umstadt』、もちろん有名な『Zwilling』と『Solingen』も忘れてはいけません。

紳士服の本場イギリスでは、Sheffield生まれの鋏『Wilkinson & Sons』が特に有名です。
このWilkinsonだけが今でも13インチ(約33センチ)の鋏を作り続けています。また『William Whiteley』もSheffield生まれの鋏として現在も活躍しています。

最後に、意外にも世界のテーラーから一番支持されている鋏はアメリカ製です。
個人的な偏見ですが、ずいぶん大雑把な仕事をしそうに思えるのですが・・・
New Jersey生まれのその鋏は『R. Heinisch』というブランドで、それと双璧をなすのが『Wiss & Sons』です。両方とも大変似たデザインで、とても個性的な形をしています。


あるイギリスの服飾系の掲示板を見ていたら、結論的に”昔の”R. Heinischが一番良いと結論つけていました(あくまで“昔の”)。一方、日本で一番といっても差し支えの無いテーラーはWissよりもWilkinsonの方が使い勝手がよいとおっしゃっていたので、まぁ、人それぞれなんだと思います。


これらの鋏を今入手することは大変困難ですが、さらに困難なことが私にはあります。それは左利きということです。たまにブランドの鋏を見つけることがあっても、その90%以上が右利きなので購入することができませんでした。

それが昨年偶然見つけたのです、左利き用の14インチのWilkinsonの鋏をっ!!
総左の鋏ではなく、持ち手の部分だけが左用でしたが私には願ったり叶ったりでした。お世辞にもよい状態とは言えない鋏でしたが、何件かの研ぎ師にお願いをしてようやく使える代物となりました。

慣れない大きさと(今まで26センチの鋏を使っていたのが、36センチの鋏になったのですから当然ですが)重さで随分苦労しましたが、最近ようやく自分の思うように扱えるようになってきました。そこで本邦初公開??左利き用のWilkinsonの鋏をご紹介します。右の26センチの鋏と見比べて見てください。

Wilkinson Shears Left-handed2



上記の掲示板を見ていたらやはりいました、鋏マニアが。思わず見とれてしまいます。
右上の方にあるのがR. Heinischの鋏です。特徴のあるデザインが秀逸です。一番左はWilkinsonではないかと思います。

R. Heinisch

浜松市のオーダースーツ【テーラー新屋】はこの左用Wilkinsonを生涯大事に使い続けるとともに、R. Heinischの左利き鋏を見つけたら是非教えていただきたいと思います。



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2008.06.07 | Comments(1) | Trackback(0) | 服飾小物

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